瀬戸内国際芸術祭2019「大島」編

瀬戸内国際芸術祭2019「あつまる夏」会期中に大島に行ってきたのでレポートする。
大島は女木島、屋島、小豆島に囲まれている小さい島。

鷲ヶ峰展望台から見た大島
女木島「鷲ヶ峰展望台」から見た大島

フェリーの向こう側が大島、その先に見える大きな島が小豆島。
画面右に見えている陸地は庵治町だよ。

大島のモミジアオイ
大島に咲いていたモミジアオイ

大島のモミジアオイ2

大島のレポートについて

大島には国立ハンセン病療養所の「大島青松園(せいしょうえん)」がある。
ハンセン病について間違った情報により、強制的に大島に連れてこられた方々への差別や偏見があった。

大島は人権について考える場所でもある。

大島では差別や偏見にあった方々のメッセージをアートに乗せて伝えている。

アートを「楽しむ」ということが何か不謹慎な気がしてレポートをするということを躊躇したのだけれど、今回は自分の感想や思想などは抜きにしてお送りするよ。
事実のみを伝え、それぞれの方にアートから何かを感じていただければ幸いだ。

大島へのアクセス

高松港からフェリーで30分の場所にあるよ。

高松港から大島へ

ちなみに庵治港から「まつかぜ」というフェリーも出ている。

運賃は無料で、手続きは不要、直接フェリーまで行く。
女木島行きの「めおん」、「めおん2」の奥にあるよ。

▼「せいしょう」に乗って行く。

大島行き「せいしょう」

▼運航時刻は以下を参照のこと。

■高松-大島運航時刻表

あ、高松市民でありながら知らなかったことがある。
高松と大島のフェリーしかないと勘違いをしていた。
高松から9:10の始発で来たら、帰りは13:25に乗るしかないと思っていたんだよ。
多くの方が11:30の高速艇に乗って男木島へ移動していたよ。

大島に来て、11:30に男木島に移動するのはいい作戦だと思う。
(後で知ったんだけど、男木島行きは

作品について

os01「青空水族館」田島征三

大島青空水族館

大島泣く人魚
「泣く人魚」

人形は安藤洋子さんが手がけられている。

大島さかなのさんぽ
「さかなのさんぽ」

▼作品名が見当たらず。

大島青空水族館のオブジェ

大島深海のミジンコたち
深海のミジンコたち

大島海の妖精たち
「海の妖精たち」

野田美千代さんの海藻を使用した作品。

大島海の妖精たち2

野田さんは、海藻の生理生態学の研究補助を務めていて、海藻おしばデザインを創出された。

大島海の妖精たち3

また、海藻おしば教室を通して環境問題に取り組まれている。

大島海の妖精たち4

活動内容がメディアでも多く取り上げられている。

青空水族館「すてられた海」
「すてられた海」

「どうして私を捨てたの?」と音声が流れている。
写真右下「ひっぱって」と書かれてあるのを現像して知る(苦笑)

青空水族館作品名不詳
作品名不詳

あれ、作品名を記録するのを忘れたよ・・・

木の実を天井からぶら下げてある。

青空水族館作品名不詳2

次回に調べておくよ。

青空水族館作品名不詳3

青空水族館ひとりぼっちの海賊
「ひとりぼっちの海賊」

os02「森の小径」田島征三

タイルだけではなく、この庭全体が作品。

大島「森の小径」

島に自生していたトベラやウバメガシ、ヤマツツジ、盆栽などで作庭して管理している。

os03『「Nさんの人生・大島七十年」-木製便器の部屋-』田島征三

メッセージ性の強いアートだった。

「Nさんの人生・大島七十年」-木製便器の部屋-その1

「Nさんの人生・大島七十年」-木製便器の部屋-その1②

「離郷」
すんぐ治って帰れると思うちょった。
けんど母はかみのけをふりみだし
どこまでもどこまでも
バスをおわえてきたのが
不思議だった。

「Nさんの人生・大島七十年」-木製便器の部屋-その2

「強制労働」
まだ軽症のぼくは
重症者の看護をさせられた。
便器も足りなかった。

「Nさんの人生・大島七十年」-木製便器の部屋-通路

「Nさんの人生・大島七十年」-木製便器の部屋-その3

「Nさんの人生・大島七十年」-木製便器の部屋-その3②

「結婚・中絶」
けっこんしてやんがて
こどもができたがよ
ほんとうはうれしいことやのに、
つらいかなしいことばかり
やった。

「Nさんの人生・大島七十年」-木製便器の部屋-その4

「Nさんの人生・大島七十年」-木製便器の部屋-その4②

「予防服」
タタミの上で寝ゆうに、
全身予防服でかためて、
土足で上ってくる。
ピンセットでクスリを
渡すし、こちらから
わたしたものは、
消毒液でひたして・・・・

「Nさんの人生・大島七十年」-木製便器の部屋-その5

『文化勲章授与者「光田健輔」氏』
この人たちは古ダタミと同じ
ハンセン病菌はたたけばいつまでも
ホコリが出る!
死ぬまでとじこめておけ

「Nさんの人生・大島七十年」-木製便器の部屋-その6

わしは治っている
菌(ほこり)なんかずっと前から出てない。
光田さん!なぜわしを30年余分に閉じ込めた!?

「Nさんの人生・大島七十年」-木製便器の部屋-その7

光田さんは、力の強い側(権力・製薬会社)、大多数の側(差別する側)に立って「立派な人」になった。
でもぼくに、光田さんを非難できるだろうか?
この国でNさんと同じ70年を生きて、Nさんのことを知らなかった。知ろうともしなかった。
Nさんに対してぼくは罪を冒しつづけてきた。
田島征三

os04「稀有の触手」やさしい美術プロジェクト

大島「稀有の触手」

ブルーの上にモノクロ写真はすごく浮かび上がるね。

大島「稀有の触手」3

▼この写真は洞窟の写真。

大島「稀有の触手」2

以下ピントがズレてしまったけど、掲載するよ。
直視できず動揺したんだと思う。

大島「稀有の触手」4

大島「稀有の触手」5

ハンセン病になると視力など感覚を失う場合があるんだけど、大島の歌人「斎木創」さんの歌「唇や舌は麻痺なく目に代る稀有の触手ぞ探りつつ食う」からの作品名。

緊張感を大島に咲いていた花によって緩和。

大島の花

os05『{つながりの家}GALLERY15「海のこだま」』やさしい美術プロジェクト

かつて入所者が暮らしていた15寮にあるので「GALLERY15」かな。

{つながりの家}GALLERY15「海のこだま」

島に遺された唯一の木造船なんだって。

{つながりの家}GALLERY15「海のこだま」右

{つながりの家}GALLERY15「海のこだま」左

os06「歩みきたりて」山川冬樹

大島「歩みきたりて」

終戦後、モンゴル抑留中にハンセン病が発覚し、大島で暮らした歌人「政石蒙」さんの足跡を山川冬樹さんがたどる。

そして政石蒙さんの遺品。

政石蒙遺品1

モンゴル、大島、松野(政石蒙さんの故郷愛媛県)を巡った山川さんの映像と遺品による作品なのだ。

政石蒙遺品2

政石蒙遺品3

os07「海峡の歌/Strait Songs」山川冬樹

冒頭の写真で説明したけど、大島から庵治町は香川県側で最も近い。
(最短で約1km)
収容所から自由を求めて庵治町まで泳いで行った方が後をたたなかった。

海峡の歌/Strait Songs

山川さんが大島と庵治町を泳いで渡るという映像作品。

裏側にまわると・・・

海峡の歌/Strait Songs裏側

こちらも映像だ。

os08「リングワンデルング」鴻池朋子

この作品は難航したよ・・・

os06、07を鑑賞した後に北の山に入る。

大島の山道

受付らしい場所に到着。

大島の北の山登山道入り口

ん?登山のアクティビティが作品なのか?

体育会系でアウトドアラーは行かねばなるまい。

大島の北の山登山道

坂はなだらかなので問題なさそうだ。

お~瀬戸内ブルー!

大島の北の山登山道から見た海

▼今回の作品「リングワンデルング」の表札か?

リングワンデルング表札

公式サイトでは、森の中の灯りのオブジェが掲載されているけど、どこにあるんだろうね?

お~やっぱり瀬戸内海の眺めはとてもいい!

大島北の山の登山道から見た瀬戸内海

大島北の山の登山道分岐
登山道分岐

何と、登山アクティビティは散策がメインで、さらに分岐もあるんか~い。

東の遠吠に行くぜ。

大島東の遠吠からの景色

この断崖は「馬の骨」と呼ばれ、東方の出身者はここから東に向かって故郷を拝んだ。崖づたいに浜に降り、貝や海藻も採った。左手には「牛の骨」と呼ばれる島の最北端が見える。

「牛の骨」どこ?
(疲れていてこの時文章を読んでいない・・・)

分岐点まで戻るよ。

山道では以下のような説明書きが所々に配置されていた。

大島山道での説明

生来、味覚がなかった。その上視覚を失い、音だけの世界に生きるようになり、闇の中での対話は幽霊のようなものと話をしているみたいで、見舞いに来てくれる人が、そこにいることを確かめるように軽く叩くのが癖になった。唇だけが唯一の先鋭な感覚器官だった。

大島の美しい山道

先に進む。

▼「潮騒トレイル」と書かれてある。

大島潮騒トレイル

ものは言いようだ。
普通に歩くよりも、今現在、潮騒を楽しみながら山道を歩くアクティビティ挑戦中だ、と思い込めば、人生は相当楽しいものになるよ(笑)

いや、冗談を言っている場合じゃなくて、山道の緑は美しいよ。

大島北の山美しい森

大島北の山美しい森2

ん?

大島北の山作品

キノコかと思ったけど、よく見ると何か不自然・・・
これも何かの作品かね?

お、これは「リングワンデルング」か?

大島北の山美しい森3

※この時は分からなかったけど、これが「リングワンデルング」。

いやいや、公式サイトの写真と全然違う。

あ、さっきの白い物体、やっぱり何かの作品だわ。

大島北の山作品2

「西の遠吠」に到着。

大島西の遠吠

作品どこじゃぁ!西に向かって遠吠え。

大島西の遠吠からの景色

大島山道の説明2

逃走は開所以来珍しくなく、風のない海の静かな晩は、「逃走日和だ」と挨拶がわりにしたほどだ。
ある晩に10名逃走した。空前の大人数である。
女児を連れた女2人、男児を連れた男1人、他に4人。
逃走方法は、小舟を盗むか、昼間周辺で漁をしている漁民に連絡しておいて夜間に打ち合わせ場所へ迎えに来てもらうか、あるいは自力で海峡を泳ぎ切るか、三者のうちいずれかだった。

口で物をさぐる、ということは、私たち盲人のほとんどが行う。風呂場などでは、靴下を履くにも肌着を取り替えるにも、着物から下着まで、帰りにはゴムの短靴ま口でさぐる。すべて唇に触れて確かめる。

大島山道の作品3

大島山道の海景色

ここで、もしや作品を見逃したのでは?と戸惑う。
後から来た男性に、作品のことを相談してみた。

お互い発見できていなかったので、作品はなかったのでは?見逃してはいないだろうということになった。

獣の皮をかぶり
草の編み物
煙を燻すときだけ
その所在がわかった
山を転がり
海に潜って
遊び疲れて
眠っているよ
風は匂いを運ぶ
谷の者よ
野の者よ
森は深く
草は茂っている

これも作品っぽい。

この竹林が「リングワンデルング」か?

大島美しい竹林

分からぬまま、どうも人生を教えてくれた「潮騒トレイル」は終わりに近づいているようだよ。

大島「風の舞」
「風の舞」

そして受付に戻って係員の方に聞いてみた。

そして驚愕の返答が!

「よく聞かれるんですよ。しかしこの灯りのオブジェは随分前の作品で、作者から最新情報が届いておらず、こちらも把握できておりません」
とのこと。

よく聞かれるのであれば、早急に解決していただきたいので、この場を借りて改善を要望させていただく。

os08「物語るテーブルランナー in 大島青松園」鴻池朋子

「カフェ・シヨル」内にあるランチョンマットの作品。

物語るテーブルランナー in 大島青松園

os08「月着陸」鴻池朋子

「カフェ・シヨル」内にある映像作品。

大島「月着陸」

大島の動物や自然がいっぱい見られるよ。

os09「{つながりの家}カフェ・シヨル」やさしい美術プロジェクト

{つながりの家}カフェ・シヨル

お洒落な店内。

{つながりの家}カフェ・シヨル店内

外国人ボランティアの方が一生懸命対応されていた。

{つながりの家}カフェ・シヨル店内2

暑くなってここに涼みに戻ったんだけど、大繁盛。
ランチも美味しそうだった。

{つながりの家}カフェ・シヨルソファー

os10「大切な貨物」クリスティアン・バスティアンス

高松市立庵治第二小学校で開催される、秋のみの限定作品。
下見に行ってきた。

高松市立庵治第二小学校

秋に来るよ(^^♪
※都合がつかず訪れることができなかった・・・

ユリがいっぱい咲いていた。

大島のユリ

テッポウユリなのか、タカサゴユリなのか・・・

風の舞

大島に来たら「風の舞」に行こう。

▼観音像

大島風の舞の前の観音像

大島一鐘招福

みんなの福のために鐘を鳴らそう。

大島一鐘招福を鳴らす

あ、結構大きい音。
ご注意を。

大島風の舞
「風の舞」

亡くなられた方を火葬した際、残りの骨を納める「風の舞」というモニュメント。
「せめて死後の魂は風に乗って島を離れ、自由に解き放たれますように」という願いが込められている。

まとめ

大島で、アートを通して人権のことを考えた。

大島の松

美しい場所なので、ぜひお立ち寄りを。

大島の海岸

先ほど潮騒トレイルで作品について迷っていた時に知り合いになった方と意気投合して帰りの船で連絡先を交換した。

彼も実はアーティストだったので、今後ご紹介できれば。

▼瀬戸内国際芸術祭2019をまとめているのでご覧いただければ幸いだ。